介護を仕事とする場合、その職場はどういったところが思い浮かぶでしょうか?
特別養護老人ホーム、いわゆる「老人ホーム」やデイサービスなどをイメージされる方も多いかと思います。
しかし、その「老人ホーム」だけでも多岐にわたり、介護保険を使って利用できるサービスは本当に様々です。
介護を仕事として実施する場所として、介護保険適用の施設や事業所に限る訳ではありませんが、介護職にとって介護保険とは深い関係性があり、介護保険が適用されるサービス提供の場は、介護職が活躍できる場所と言えるでしょう。
これから介護の仕事をしてみたいと考えている方、既に介護を仕事にしていて転職を考えている方、また介護保険サービスを利用したい、ほかにどんなサービスがあるか知りたいという方も是非参考にしてみてください。
また、これらの一覧は介護福祉士や介護支援専門員資格の試験勉強をされている方も必見です!
介護保険サービスとは
介護保険サービスとは、要介護(または要支援)状態にある第1号被保険者(=65歳以上)及び特定疾病を患っている第2号被保険者(40歳以上64歳未満)が、介護保険を利用して1割から3割(所得に応じて変動)の自己負担額で介護を受けられるサービスのことです。
特定疾病は、継続して介護が必要となる疾病のうち、本来高齢者に多くみられる疾病が65歳未満で発生する場合を想定したもので、心身の病的な加齢現象と医学的関係のある疾病。16の特定疾病が指定されている。
2021年版 ユーキャンのケアマネジャー 速習レッスン p.52
介護保険サービスを利用するためには、要介護認定(または要支援認定)を受ける必要があり、心身の状態にあったサービスの提案を受けながら、可能な範囲内で希望するサービスを選択して利用することができます。
介護保険サービスには、要介護1から5の判定を受けた方が対象となる「介護サービス」と、要支援1または2の判定を受けた方が対象となる「介護予防サービス」があり、その中でもサービスの対象となる方や受けられる内容も異なります。
介護保険サービス一覧
冒頭でもお伝えした通り、介護保険を使って利用できるサービスは本当に様々です。
施設に入居する場合、自宅で暮らしながら訪問系のサービスを受けたり、事業所に通う通所系のサービスを受ける場合、またそれらの中でも住み慣れた地域で生活し続けることを目的とした地域密着型のサービスなどです。
そこで、今回は「居宅サービス」「施設サービス」「地域密着型サービス」に分けて、それぞれの内容の特徴やサービスの利用条件、働く上で必要となる資格について、合わせてひとつずつ見ていきましょう。
居宅サービス
居宅サービスとは、名前の通り、居宅、つまり自宅で暮らしながら受けられるサービスのことを言います。主に「訪問系サービス」「通所系サービス」「短期入所サービス」があります。
訪問介護
【内容】居宅を訪問して、入浴介助や排泄介助、食事介助などの身体介護、または料理や洗濯、掃除などの家事や薬の受け取りなどの生活援助を行うサービス。
【対象】要介護者のみ(介護予防サービスなし)。訪問介護サービスのうち、生活援助は、一人暮らしあるいは、同居している家族に障害や疾病がある場合など、やむを得ない事情がある場合のみ利用することができる。
【資格】介護職員初任者研修以上の資格が必須(身体介護を行う場合)。
訪問看護※
※介護保険を使って利用できる介護保険サービスに該当しますが、下記【資格】欄の資格がない介護職員は勤務に従事することができません。
【内容】病院・診療所や訪問看護ステーションの看護師などが居宅を訪問し、医師の指示のもと療養上の世話や診療の補助を行うサービス。主治医から特別看護指示書が交付された場合や厚生労働省が定める疾病があるなど、医療ニーズの高い場合は、例外的に医療保険から訪問看護が提供され、介護保険の訪問看護は提供されない。
【対象】訪問看護自体は子供から高齢者まで年齢制限はないが、介護保険を利用してサービスを受ける場合は要介護者。要支援者の場合は介護予防訪問看護サービス。要介護、要支援認定を受けている場合は、医療保険より介護保険が優先的に利用される。
【資格】看護師、准看護師、保健師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士
訪問リハビリテーション※
※介護保険を使って利用できる介護保険サービスに該当しますが、下記【資格】欄の資格がない介護職員は勤務に従事することができません。
【内容】病院・診療所、介護老人保健施設、介護医療院の理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が病状が安定期にある要介護者(要支援者)の居宅を訪問し、理学療法、作業療法、その他必要なリハビリテーションを行うサービス。計画的な医学的管理を行っている医師の診療日から3か月以内の期間、その医師の指示のもとサービスを行うことができる。
【対象】医師にサービスの提供が必要と判断された要介護者。要支援者の場合は介護予防訪問リハビリテーション。
【資格】理学療法士、作業療法士、言語聴覚士
訪問入浴介護
【内容】入浴車など、専用の浴槽を持参して自宅を訪問し、入浴介護を行うサービス。訪問介護員が訪問して自宅の浴槽を使って入浴介助を行う、訪問介護での入浴とは異なる。
【対象】自宅に浴槽がない、狭いなど、自宅での入浴が困難な全ての要介護者、要支援者を対象とする。病状が不安定であったり、感染症を患っている方、医療器具をつけている、またターミナル期にある方も利用することができる。
【資格】無資格でも可能。しかし、介護度の高い利用者や介護の知識を必要とする場面も多いため、介護職員初任者研修以上の資格を応募要件としている事業所が多い。看護師または准看護師も配置される。
居宅療養管理指導※
※介護保険を使って利用できる介護保険サービスに該当しますが、下記【資格】欄の資格がない介護職員は勤務に従事することができません。
【内容】医師、歯科医師、薬剤師などが、通院が困難な要介護者の居宅を訪問し、療養上の管理や指導を行うサービス。居宅療養管理指導には、医学的管理指導、薬学的管理指導、栄養指導、歯科衛生指導などがあり、サービスを提供する目的や医師からの指示により担当者が異なる。
【対象】通院が困難であり、医師から必要と判断された要介護者。要支援者の場合は介護予防居宅療養管理指導。
【資格】医師、歯科医師、薬剤師、歯科衛生士、管理栄養士。
通所介護(デイサービス)
【内容】デイサービス事業を行う施設またはデイサービスセンターに通ってもらい、入浴、排泄、食事などの身体介護や、生活についての相談や助言、健康状態の確認、日常生活において必要な機能訓練などを行うサービス。外出機会の確保や社会との交流の他、家族の介護負担軽減を目的としてサービスを行う場合もある。
【対象】全ての要介護者(介護予防サービスなし)。
【資格】無資格でも可能。
通所リハビリテーション(デイケア)
【内容】介護老人保健施設や介護医療院、病院・診療所に通ってもらい、理学療法や作業療法などの必要なリハビリテーションを行うサービス。個別リハビリテーション、集団リハビリテーション、居宅生活支援などが実施される。
【対象】医師から必要と判断された要介護者。要支援者の場合は介護予防通所リハビリテーション。
【資格】介護職の場合は無資格でも可。医師の他、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師、准看護師のいずれかが配置される。
短期入所生活介護(ショートステイ)
【内容】老人短期入所施設、特別養護老人ホーム、養護老人ホーム、特定施設入居者生活介護の指定を受けた施設などに短期間入所してもらい、入浴、排泄、食事などの介護、その他日常生活上の世話や機能訓練を提供するサービス。また、家族の身体的、精神的負担の軽減を図る目的で利用される場合もある。事業所の類型として、単独型、併設型、空床利用型がある。
【対象】在宅で生活する要介護者。要支援者の場合は介護予防短期入所生活介護。
【資格】介護職の場合は無資格でも可。その他、入所する施設により、様々な職種が配置されているが、介護職が主となってサービスの提供を行う。
短期入所療養介護(ショートステイ)
【内容】介護老人保健施設、介護医療院(介護療養型医療施設)、療養病床のある病院や診療所などに短期間入所してもらい、看護や医学的管理下における介護、機能訓練、その他必要な医療や日常生活上の世話を提供する。また、家族の身体的、精神的負担の軽減を図る目的で利用される場合もある。
【対象】在宅で生活する要介護者。要支援者の場合は介護予防短期入所療養介護。
【資格】介護職の場合は無資格でも可。その他、入所する施設により、様々な職種が配置されている。
福祉用具
【内容】福祉用具貸与(要支援者は介護予防福祉用具貸与)と、貸与になじまない特定福祉用具を販売する特定福祉用具販売(要支援者は特定介護予防)がある。福祉用具購入費として、同一年度で10万円まで購入可能(1割負担の場合、9万円が介護保険から給付される)。
【対象】自立支援と負担軽減等を目的とし、福祉用具を必要とする要介護者。要支援者の場合は介護予防福祉用具貸与、特定介護予防福祉用具販売。
【資格】福祉用具貸与・福祉用具販売事業所には、福祉用具専門相談員が配置される。介護福祉士、義歯装具士、保健師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士資格を有する者のほか、福祉用具専門相談員指定講習の課程を修了し、修了証明書の交付を受けた者が福祉用具専門相談員になることができる。
住宅改修※
※介護保険を使って利用できる介護保険サービスに該当しますが、住宅改修を行うのは、保険者から依頼された施工業者が行うため、介護職が活躍できる場所としての直接的な関わりはありません。
【内容】利用者の転倒予防や安全な移動、生活動作の自立などを目的として、対象となる住宅の改修工事を行ったときに保険から給付される制度。居住する同一の住宅について20万円まで利用可能(1割負担の場合、18万円まで介護保険から給付される)。なお、転居した場合や要介護の程度が著しく高くなった場合、再度支給が受けられる場合がある。
【対象】要介護者および要支援者。区分による制限などは設けられていない。
- 居宅サービスには「訪問」「通所」「短期入所」のサービスがある
- 在宅において居宅サービスを受ける場合、複数の居宅サービスを組み合わせて利用することができる
施設サービス
施設サービスとは、介護保険施設に入居して介護サービスを受けることを言います。
施設を運営する母体は、地域公共団体や社会福祉法人、医療法人などに限られています。
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
【内容】入居する利用者に、施設サービス計画に基づいて入浴・排泄・食事などの日常生活の世話、機能訓練、療養上の世話を提供するサービス。介護老人福祉施設では、明るく家庭的な雰囲気のもとで、可能な限り在宅生活への復帰を念頭において、利用者の自立支援が実施される。
【対象】常時介護を必要とする要介護3以上の者。やむを得ない事情がある場合は、特例的に要介護1、2でも入所が認められる。また、老人福祉法に基づき、措置入所も実施される。
【資格】介護職の場合は無資格でも可能だが、多職種と連携しながら主となって入居者の生活を支える役割を持つため、介護職員初任者研修以上の資格を保有していることが望ましい。介護福祉士が活躍できる場所。
介護老人保健施設
【内容】居宅における生活を営むことができるよう、心身機能の維持回復を主な目的として、施設サービス計画に基づいて提供される。施設において医学的管理下における看護、介護、機能訓練その他必要な医療や日常生活上の世話を行う。介護老人保健施設では、明るく家庭的な雰囲気のもと、家庭への復帰を目指して自立支援が実施される。
【対象】要介護1以上の者。入所できる期間はおよそ3か月から6か月程度。比較的医療度の高い方が多い。
【資格】介護職の場合は無資格でも可能。しかし、介護老人保健施設に医師、看護師、栄養士、その他リハビリ職など、様々な専門職が配置され、多職種と連携しながら介護においても専門的知識が求められるため、介護職員初任者研修以上の資格を保有していることが望ましい。
介護医療院(介護療養型医療施設)
【内容】施設サービス計画に基づいて、療養上の管理、医学的管理下における看護、介護、機能訓練その他必要な医療、日常生活上の世話を行う施設。医療法上は医療提供施設に位置付けられる。
ターミナルケアや看取りにも対応し、医療機能と生活施設としての機能を併せ持つ。
2018年(平成30年)度から、介護保険施設として創設され、それに伴い介護療養型医療施設が廃止(2024年(令和6年)3月末まで経過措置期間)された。介護療養型医療施設からの転換先としても想定されている。
【対象】日常的に、また長期的に医学的管理が必要な状態である要介護1以上の者。
【資格】介護職の場合は無資格でも可能。介護医療院には医師、看護師、栄養士、その他リハビリ職など、様々な専門職が配置される。介護職は主に生活施設としての機能に対し、生活援助を中心に行う。
地域密着型サービス
地域密着型サービスとは、2006年(平成18年)4月より創設された、市町村が指定する事業者が提供するサービスです。
今後増加が見込まれる認知症高齢者や要介護高齢者が、できる限り住み慣れた地域の中で生活を続けられるよう、また、地域の特性を生かし、その地域に沿ったサービスを提供することが期待されています。
夜間対応型訪問介護
夜間に定期的に要介護者の自宅を巡回、または随時通報を受けて、自宅において身体介護や生活に関する相談、助言などを行い、夜間において安心して過ごせるようサービスを行う。利用者には、通報のためのケアコール端末や携帯電話などの端末機器を配布する。
小規模多機能型居宅介護
利用者の心身の状況や環境に応じ、また自らの選択に基づいて、「通いサービス」を中心に、「訪問サービス」や「宿泊サービス」を組み合わせ、柔軟にサービスを提供する。入浴、排泄、食事などの身体介護の他、調理、洗濯、掃除などの家事や、生活相談、助言、健康状態の確認、機能訓練などを行う。
入居定員は29人以下と定められ、訪問看護や訪問リハビリテーション等の居宅サービスを同時に利用することができる。
看護小規模多機能型居宅介護
小規模多機能型居宅介護に、必要に応じて訪問看護を組み合わせて提供する、複合型サービス。看護サービスの提供開始時には、主治医の指示を受ける必要がある。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護
日中と夜間を通じて、訪問介護と訪問看護が密接に連携しながら、「定期巡回サービス」「随時対応サービス」「随時訪問サービス」「訪問看護サービス」を行い、訪問介護と訪問看護を一体的に提供する「一体型」と、別の訪問看護事業所と連携を図って実施する「連携型」がある。
事業所には利用者の心身の状況などの情報を蓄積できる体制を整え、必要に応じてオペレーターに利用者からの通報を随時受けることができる通信機器を備えて携帯させる。また、利用者には通信のための端末機器(ケアコール端末や携帯等)を配布する。
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
認知症のある利用者に、共同生活住居において、入浴、排泄、食事などの身体介護の他、日常生活上の世話や機能訓練を行うサービス。家庭に近い環境のもとで地域住民との交流を図り、自立した生活を送ることを目的としてサービスが提供される。1つのユニットの定員は5~9人と設定され、サービスを利用している間は、居宅療養管理指導を除く他の居宅サービス、地域密着型サービスには保険給付を行うことができない。
認知症対応型通所介護
2016年(平成28年)度より、利用定員18人以下の小規模事業所での通所介護が、地域密着型通所介護に移行された。また、通所介護の一類型であった療養通所介護も、同時に地域密着型通所介護に移行された。
地域密着型通所介護
施設に併設されない「単独型」、老人ホームや病院等に併設される「併設型」、認知症対応型共同生活介護事業所の居間や食堂、地域密着型の介護施設等の食堂や共同生活室において、それらの利用者と共用する「共用型」がある。
認知症の特性に配慮して行われるサービスであるため、一般の通所介護と一体的な形で行われることは認められていない。
地域密着型特定施設入居者生活介護
特定施設入居者生活介護とは、有料老人ホーム、軽費老人ホーム、養護老人ホームなどの特定施設に入居している要介護者に、身体介護や家事援助、生活に関する相談や日常生活において必要な機能訓練などを行うサービス。
特定施設の従業者がすべてのサービスを包括的に提供する一般型と、特定施設の従業者が基本サービスを行い、介護サービスは特定施設が委託契約した外部の居宅サービス事業者が提供する外部サービス利用型がある。
地域密着型特定施設入居者生活介護とは、入居定員29人以下の介護専用型特定施設に入居している要介護者に提供される。提供されるサービスの内容は、特定施設入居者生活介護と同じだが、地域密着型では、外部サービス利用型は設定されていない。
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
入所定員29人以下の介護老人福祉施設に入所している要介護者(原則要介護3以上)に行われるサービス。提供されるサービス内容は、介護老人福祉施設と同じ。
まとめ
今回は、必要最低限の内容のみでしたが、いかがだったでしょうか?
私は介護支援専門員の資格勉強の時に、初めてこんなにたくさんの介護保険サービスがあることを知り、驚きました。
それぞれのサービスによって、受けられるサービスや利用目的も本当に多岐に渡ります。
働く側にとっても、自分はどんな介護がしたいか、どんなサービスを提供したいかを明確にし、沢山ある選択肢の中から自分に合った事業所や施設を見つけることは、より長く、楽しく、自分らしく介護を続ける上で最も大切だと言っても過言ではないと思います。
また、介護の専門職として、介護を必要とする方にとって、より適した介護サービスを提案できるよう、今後それぞれのサービスの内容をさらに深堀りして発信していきたいと思っています。