排泄介助、食事介助、そして入浴介助は「三大介助」と言われ、身体介護の基本とされています。
一言に入浴介助といっても、様々な生活支援技術や知識が必要となり、しっかりと状態を把握して観察しながら、幅広い選択肢の中でより良い方法を選択していく必要があります。
今回は、そんなご利用者様の生活を支える上で、不可欠となる入浴介助について詳しくみてきましょう!
入浴するということ
そもそも、入浴するということはどういうことでしょうか?
日本人は、世界的にみても入浴好きと言われています。
日本の文化とも言えるでしょう。
そんな、当たり前の生活習慣とされている入浴をはじめとして、身体を清潔に保つということは基本的欲求のひとつです。
そして、その基本的欲求の中で、最も初めに人間が必要とする生理的欲求を満たすために、身体を清潔にする方法として一番効果的なのが「入浴」という行為なのです。
入浴という行為は、自分自身の生理的欲求を満たすだけに留まりません。
身体の清潔を保つことは、人間関係の円滑化にも繋がります。
大袈裟に感じられるかもしれませんが、日々当たり前のように入浴している私たちの生活とは異なります。
特に介護を必要とする方々にとって、入浴という行為はハードルが高く、徐々に入浴するという習慣を失ってしまい、身体の清潔に気を配れなくなるということがあります。
これらは心身機能を低下させ、外出機会を制限し、生活全般を不活発にしてしまいかねません。
このような悪循環に陥らない、または抜け出していただくためにも、入浴をお手伝いするということは、生活全体を支えることに大きく繋がっていくのです。
では、入浴することで、人間の身体にとってどのような効果があるのか、みていきましょう!
入浴の効果
入浴の目的として最も一般的なのは、身体の清潔を保つことではないでしょうか。
その目的の通り、入浴すると皮膚を清潔に保ち、細菌感染を予防することができます。
また、血液やリンパの循環を促進することで、新陳代謝を促し、老廃物の排出を助けてくれます。
これは、皮膚の毛細血管や皮下の血管が広がり、血流がよくなるためです。
この働きにより、適切に入浴することで、便秘症が解消するとも言われています。
胃腸や腎臓など、臓器の機能を高める効果があるとも言われていますが、これらの身体に直接関係する効果だけではありません。
入浴には、何といってもリラックス効果があります。
体の緊張や疲労を和らげ、ストレス解消にも繋がります。
高齢者に限らず、社会で働く私たちも、疲れた~!っていうときに、「ゆっくりお風呂に入りたい…」と思うこと、ありますよね。
私は実際に入浴介助を行う上で、この「リラックス効果」を一番大切にしたいと思っています。
入浴のリラックス効果
入浴すると何故リラックスできるのかというと、副交感神経の働きが促進されるからです。
副交感神経とは、自律神経の一種で、心拍数や血圧を下げたり、呼吸を深く、ゆっくりにし、腸の蠕動運動を促進する働きがあります。
前述のそれぞれの入浴の効果にも繋がっていることがよく分かります。
副交感神経の反対が交感神経といい、活動時や緊張時、ストレスを感じているときに働きます。
交感神経が優位になると、心拍数や血圧は上昇し、筋肉を緊張させます。
自律神経とは、人間の意思に関係なく24時間365日働き続けている神経のことで、呼吸、体温、血圧、心拍数、消化機能、代謝、排泄など、生きていくうえで欠かすことのできない生命活動を維持しています。
この自律神経は、交感神経と副交感神経で成り立っていて、どちらかが常に優位になることなく、バランスよく保たれることで正常に維持することができます。
これらの効果をしっかりと理解した上で、より効果的で快適な入浴の介助を意識していきましょう。
入浴介助のリスク・事故防止
入浴には、人間の身体にとって様々な効果があることが分かりましたが、いいことばかりではありません。
介助として行う入浴には、沢山の危険や起こりうる事故に注意する必要があります。
まずは大前提として、浴室や浴槽内は、転倒や溺水などの事故が起こりやすい場所であるということを認識しておきましょう。
当たり前ですが、入浴中は衣類や靴を身に着けておらず、普段杖や歩行器を必要とする方も、基本的に入浴中は使用することができません。
高齢者に限った話ではありませんが、石鹸や床のぬめりなど、滑りやすい環境にあり転倒には注意が必要です。