介護現場で活かしたい「無知の知」という考え方

ひまわりの戯言

皆さん、「無知の知」という言葉をご存じでしょうか?

私は高校生のとき、倫理の授業でこの「無知の知」という言葉を知り、当時の私にとって、またこれから社会で生きていく中で、大切にしていきたい言葉だと感じました。

普段の生活の中のどんな場面であっても、活かすことのできる考え方ですが、今回は様々な介護技術や専門的知識、また関わりあうお一人おひとりについて「知る」という行為が大変重要である介護現場において、「無知の知」という考え方をどのように活かしていくことができるか、一緒に考えていきましょう!

介護福祉士9年目。
現サービス提供責任者。
介護支援専門員資格取得済み。
中学の頃からの夢だった介護福祉士。
そんな夢を叶えた私が、
介護業界の現実や問題と向き合い、
介護の魅力や情報を発信するべく
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太陽に向かって一心に咲くひまわりのように、
介護業界に「明るく愉快な愛のある夢」を。

「無知の知とは」

「無知の知」とは、古代ギリシャの哲学者、ソクラテスが残した有名な言葉のひとつです。

無知の知は「不知の自覚」と言い換えられる場合もあります

無知(不知)だということを知っている、つまり“自分に知識がないことを自覚している”という意味で、ソクラテスは「自分に知識がないことを自覚する者は、それを自覚していない人よりも賢い」と言ったと言われています。

この“自分に知識がないことを自覚していない”ことを「無知の無知」と表し、無知の知と比べながら詳しくみていきましょう。

「無知の知」と「無知の無知」

「無知の知」つまり、自分に知識がないことを自覚しているということは、もっと学ばなければならないと「自責思考」が生まれ、自分自身としっかり向き合うことで、自己成長につながります。

反対に、自分に知識がないことを自覚していないと、「自分は何でも分かっている」と思い込み、何か問題が起こった時、悪いのは周りや環境のせいだと「他責思考」になり、それ以上の成長を見込むことはできません。

無知の無知とは、ただ単に知識がない、足りないという状態のことを指しているのではありません。

人は誰しも、どんなに学識の高い人物であっても、この世のすべてを知り尽くしているなんてことは不可能です。

知識がないことが問題なのではなく、目の前の事柄についてなんでも知っていると勘違いしてしまうことが問題であり、ソクラテスは「無知の無知は一番の罪だ」と言ったとも言われています。

「無知の知」、「無知の無知」という考え方は、日々何か物事に取り組んでいく中で、また人と人が関り合っていく中で大切にすべき考え方だと思いますが、今回、職場という環境に焦点を当てて考えてみましょう。

我々介護の仕事において、毎日繰り返し行う業務や介助、長く関わるご利用者様との関係において考えてみたとき、「無知の無知」の状態になっていることはないでしょうか?

介護現場における「無知の知」

冒頭でもお話した通り、介護現場では、様々な介護技術や専門的知識、また関わり合うお一人おひとりについて、沢山の知識や情報が必要となります。

しかし、専門職である介護のお仕事、日々介護に携わる中で、またご利用者様と長く関わり合う中で、無意識のうちに「分かっているつもり」や「知っているつもり」になっているということはないでしょうか?

自分自身の「~つもり」という感覚に気づかないことこそが、ソクラテスの言う「無知の無知」です。

私自身、「無知の無知」の状態にならないように、「無知の知」という考え方を大切にしてきたつもりでしたが、無意識のうちに「無知の無知」になってしまっていたことに気づかされる出来事がありました。

「無知の無知」の体験談

私自身、自分の無知を特に自覚できたのは、初めて転職した時でした。

介護福祉士資格取得後、新卒で特別養護老人ホームへ入職し、たった5年ではありますが、環境にも恵まれ学びの多い5年間を過ごすことができました。

特養で介護技術を基礎から学び、ほとんどの入居者様が患っていた認知症に対する認知症ケアの実践、多職種との関わりを繰り返し、入職当時と比べて自分自身のそれなりの成長を実感できていた私は、介護のほとんどを理解できたつもりになっていました。

しかし、「もう少し介護を知れたら」くらいの気持ちで、在宅サービスである有料老人ホームへの転職を決め、実際に入職した当時、自分の知識の乏しさに恥ずかしくなったのを覚えています。

そもそも特養での介護が、介護現場の全てのように捉えてしまっていましたが、数ある介護施設の種類のうちのたったひとつに過ぎず、サービスの種類が違えば入居者様の特徴やサービスの提供の仕方も全く異なる場合があるということが分かりました。

介助ひとつとっても、排泄交換に使用する物品や入浴介助の機械、服薬介助のマニュアルなど、同じ介助内容でも環境が変わるだけで注意する視点も異なります。

また、転職と同時に介護支援専門員(ケアマネジャー)資格取得に向けての学習を始め、介護保険の内容や各介護サービスの内容を学習する中で、これまでの私の知識など、「介護」という分野の中のほんの一部に過ぎなかったことを知りました。

当時の私は、介護という業界について本当に無知であるばかりか、「無知の無知」になってしまっていました。

しかし、転職を機に自分の無知を自覚できたことで、それまで積み上げてきた経験や知識をしっかりと活かしながら、「もっと知りたい」「知ることが楽しい」と実感しながら、転職先での仕事に取り組むことができたと思っています。

ケアマネジャーの資格勉強も、独学では簡単なものではありませんでしたが、自分自身の知識の乏しさを先に自覚することで、知識が少しずつ増えていく喜びを感じ、楽しみながら学習することができました。

結果として、資格取得を目的とするだけではなく、介護職として働く上で活かすことのできる知識を前向きに学習することができ、あのとき試験を受けることができて本当によかったと思っています。

介護現場でどう活かせるか

介護現場において「知っているつもり」「分かっているつもり」は、「気づき」を奪う危険な意識です。

支援の幅を狭めるだけでなく、誤解や勘違いを生んでしまいかねません。

反対に、豊富な知識は支援の幅を広げます。

知識を上手く活用することができれば、支援の内容としてだけでなく、介護を利用する側にとってもできることが増え、生活機能や身体機能の向上、つまりより良い介護の実施に繋がります

介護の仕事は、人対人の関りによって生まれるため、絶対的な正解がないのが難しい点でもあると言えるでしょう。

しかし、「無知の知」という考えのもと、まだ得られていない知識を追い求め、自分の「知」と向き合いながら追求し続けることで、介護者として、また人として成長できるはずです。

私自身、まだまだ駆け出しの身、介護現場においても、介護業界という世界について知らないことだらけです。

少しずつ知識を増やせることの喜びを感じながら、介護の世界でこれからも成長していきたいと思っています。

また、このブログの執筆活動も、その成長に活かすことができたらと考えています。

まとめ

  • 「無知の知」とは「不知の自覚」との言われ、古代ギリシャの哲学者であるソクラテスが残した有名な言葉
  • 「無知の知」とは“自分に知識がないことを自覚している”という意味であり、反対に“自分に知識がないことを自覚していない”ことを「無知の無知」という
  • 介護現場において「知っているつもり」「分かっているつもり」は、「気づき」を奪う危険な意識
  • 「無知の知」の考え方のもと、知識を追い求めて自己研鑽に励むことで、支援の幅を広げ、より良い介護を実践することに繋がる

人と人が複雑に関わり合う介護という仕事において、必要となる知識や情報は絶えません。

また介護という仕事は、そんな沢山の知識や情報を上手く活用しながら、不明確な正解を導き出していく必要があり、簡単なものではありません。

しかし、そんな難しい仕事であるからこそ、その先で得られる喜びや達成感は非常に素晴らしいものです。

どんなに豊富な経験を積んでも、どれだけ長くひとり一人と関わっても、「無知の知」の考え方を忘れず、自己研鑽に励みながら、より良い介護の実践を目指していきましょう!

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